白内障の日帰り手術の流れや注意点

白内障は、水晶体が濁ってしまうことで視界がかすむ病気です。日常生活に支障が出てくると、目の負担が大きくなり、物が二重に見えたり夜間の運転に支障が出ることも少なくありません。

かつては入院して行う手術が主流でしたが、医療技術が進歩した結果、現在では多くの方が外来で手術を受け、その日のうちに自宅へ帰ることが可能になっています。

この記事では、日帰りの白内障手術の流れや注意点、そして多くの方が抱く疑問にお答えする形で、わかりやすくポイントを整理しました。手術を検討されている方はもちろん、家族や友人が白内障で悩んでいる方にも役立つ情報を提供します。

日帰りの白内障手術の流れ

日帰り手術の最大の特徴は、患者さんが病院に来院して手術を受け、その日のうちに自宅に戻れる点です。負担が少ないイメージがありますが、手術に至るまでにはいくつかの重要なステップが存在します。

  1. 術前検査と診察
    白内障の進行度合いや目の状態、全身疾患の有無などを把握するため、血液検査や眼科検査、場合によっては心電図・胸部X線なども行います。これらの結果から、手術の可否や最適な眼内レンズの種類、度数などを決定します。加えて、生活習慣や職業なども考慮しながら、医師が最適な治療計画を立てます。
  2. 手術内容の説明
    手術の具体的な方法、リスクや合併症の可能性、術後のケア手順について説明があります。わからない点はしっかりと確認し、不安な点があれば遠慮なく質問しておきましょう。医師やスタッフと十分にコミュニケーションをとることが、安心して手術に臨むための第一歩です。
  3. 手術当日の来院
    指定された時間に病院へ行き、受付を済ませます。体調確認や術前点眼を行い、血圧や眼圧を測定します。診察時に風邪や体調不良が見つかった場合、日を改めて手術をするケースもありますので、無理をせず正直に伝えましょう。
  4. 手術の実施(局所麻酔下)
    日帰りの白内障手術は主に局所麻酔で行われます。点眼麻酔や周辺部への麻酔注射などで痛みを抑えるため、ほとんどの患者さんが手術中の痛みを感じにくいのが特徴です。手術では濁った水晶体を超音波で砕いて吸い取り、新しい眼内レンズを挿入します。このプロセス自体は10~20分程度で終了します。
  5. 術後の休憩・帰宅
    手術後はしばらくベッドで休憩し、麻酔が切れた状態や目の違和感を確認します。医療スタッフが目の状態をチェックし、問題がなければ保護メガネをつけた状態で帰宅となります。病院滞在時間はおおむね2〜3時間程度ですが、混雑状況や術後の観察時間によって多少前後します。

日帰りの白内障手術の注意点

日帰り手術は身体への負担が比較的少なく、術後は自宅で療養できるメリットがあります。しかし、自宅での生活環境に移行するからこそ、以下の点に注意を払いながら安全に回復を目指しましょう。

  1. 術後の点眼管理
    感染予防や炎症抑制のため、抗生剤やステロイドなど複数種類の点眼薬が処方されます。使用回数や期間は医師の指示に従い、点眼のタイミングを間違えないようにしてください。特に初期段階では1日4回程度の点眼が必要になることが多いため、スマートフォンのアラーム設定などで管理を徹底しましょう。
  2. 洗顔・洗髪・入浴
    術後は目の傷口から感染が起こりやすくなるため、一般的に約1週間程度は洗顔や洗髪を避けるよう指導されるケースが多いです。シャワーを利用しても構わない場合が多いですが、その際は顔を濡らさない工夫をする必要があります。全身浴については、目が安定するまで見合わせるように助言されることがほとんどです。
  3. 運動や重いものを持つ作業の制限
    手術翌日からのデスクワークや読書などの軽度の作業は可能ですが、重い荷物を持ち上げるような負荷の高い労働や激しいスポーツは避けましょう。目の内圧の急激な変化や衝撃が合併症を引き起こすリスクを高めるため、運動再開時期は医師と相談して慎重に決定してください。
  4. 目をこすらない・保護眼鏡の着用
    手術直後の目は非常にデリケートで、こすったり強く押さえたりすると傷口が開いたり、感染のリスクが高まります。医療機関の指示がある場合、寝ている間は保護眼鏡を使用することが推奨されます。寝返りの衝撃や、無意識に目を触ってしまうことを防ぐためにも役立ちます。
  5. 定期検診の受診
    術後1日目、1週間目、1ヶ月目、3ヶ月目など、医師の指示に従って適宜受診を行いましょう。点眼薬の切り替えや使用期間の延長・短縮が必要になる場合がありますし、合併症の兆候を早期に見つけるためにも定期検査は欠かせません。

日帰りの白内障手術に関するFAQ

日帰り手術にかかる時間はどれくらい?

日帰りの白内障手術は、実際の手術時間自体はおよそ10~20分程度とされています。ただし、麻酔の準備や術前・術後の観察を含めると、病院に滞在する時間は2〜3時間ほどが一般的です。患者さんの全身状態や病院の混雑状況によっては、さらに時間がかかることもあります。とはいえ、入院する場合と比べるとスピーディな対応が可能である点が、日帰り手術の大きなメリットといえるでしょう。

日帰り手術の後に運転はできますか?

多くの医師や医療機関では、白内障手術直後の運転を避けるように指導しています。なぜなら、術後は視力の変化が急激に起こることがあり、手術当日は保護眼帯や眼鏡を着用しているため視界が安定しづらいからです。さらに、点眼治療の影響などで目がかすむ場合もあります。基本的には、視力が十分に落ち着き医師から許可が出た段階で、短距離から試し運転を始めるのが望ましいとされています。

日帰りの白内障手術に付き添いは必要?

日帰りの白内障手術では、多くの医療機関が患者さんの安全を考慮し、家族や友人などの付き添いを推奨しています。術後の視界が不安定になる場合が多いため、帰宅時の車の運転や公共交通機関の利用にサポートが必要になる場合があります。また、高齢者や一人暮らしの方は、翌日の通院や日常生活のサポート面でも協力してくれる人がいると安心です。付き添いが難しい際は、病院と相談して代替の手段を検討してみましょう。

日帰りの白内障手術は入院扱いになりますか?

通常、外来(入院なし)で行われる日帰り手術の場合は「入院扱い」にはならず、医療費の領収書や診療明細書にも入院費用に関する項目が記載されません。しかし、医療機関によっては「日帰り入院」として位置づけられるケースもあり、短時間だけ入院扱いになる可能性があります。そのため、医療保険や共済の給付金申請をする際には、事前に自分が受ける手術が入院扱いかどうかを確認しておくことが大切です。保険会社や共済組合へ問い合わせるときは、医療機関が発行する書類(領収書や診療明細書)をよく確認し、疑問点があれば主治医やスタッフに尋ねましょう。

日帰りで手術を受けることができない人はいる?

日帰り手術は多くの方が受けられますが、以下のようなケースでは入院を伴う手術が検討されます。

  1. 全身状態の不安定な方
    心疾患や呼吸器疾患がある方など、術後の経過観察を慎重に行う必要がある場合は、入院下での手術が安全と判断されるケースがあります。
  2. 認知機能や判断力に課題がある方
    認知症が進んでいる場合や、精神疾患によって手術中・術後の指示に従いにくい場合は、入院でのケア体制が望ましいとされることがあります。
  3. 白内障の進行が極めて高度な方
    濁りが強く水晶体が硬化していて、手術のリスクが高いと判断される場合は、入院環境での処置が選択される傾向があります。
  4. 他の重篤な眼疾患がある方
    緑内障や網膜疾患など、追加の処置が必要となる際には、入院手術が適しているケースも存在します。

該当しそうな症状や懸念点がある際は、担当の医師に自己申告して、どのような治療形態がベストかを相談すると安心です。

手術当日にアルコールは飲んで問題ないですか?

白内障の日帰り手術を受けた当日は、基本的にアルコールは控えるよう指導されることが多いです。アルコールには血管を拡張させる作用があり、炎症が起こりやすくなる恐れがあります。さらに、術後の点眼治療などに影響を及ぼす可能性もあるため、少なくとも数日は我慢することが賢明です。具体的な制限期間については、手術を担当した医師やスタッフからの指示に従いましょう。

日帰りの白内障手術は、患者さんの生活リズムを大きく変えることなく視力の改善が期待できるメリットがあります。一方で、自宅でのケアや手術後の受診など、患者さん自身や家族が気を配るポイントも多いことがおわかりいただけたかと思います。手術を成功させ、スムーズに回復するためには、医療スタッフのアドバイスをしっかり受け止め、正しい点眼とセルフケアを怠らないことが重要です。もしわからない点があれば遠慮なく医師や看護師に質問し、不安を解消したうえで手術に臨んでください。快適な視界を取り戻し、これまで以上にアクティブな日常を送れるよう、上手にサポートを受けながら治療を進めていきましょう。