白内障は加齢などによって水晶体が濁り、視界がかすんだり、ものが二重に見えたりする症状を伴う疾患です。日常生活に支障が生じるほど視力が低下する場合は、白内障手術が推奨されることが多いです。しかしながら、手術の方法や使用するレンズの種類によって、かかる費用は大きく異なります。
一般的には、保険診療の範囲で行う単焦点眼内レンズの手術であれば数万円程度で済むケースが多いですが、多焦点眼内レンズを選択すると費用が数十万円以上になることもあります。実際には、保険の自己負担割合や選択する医療機関によって変動するため、一律に「白内障手術はいくら」と断定するのは難しいのが現状です。
本記事では、白内障手術の費用がどのように決まるのか、そして手術費用を抑えるにはどうすればよいかを分かりやすく解説していきます。年齢や保険診療、自費診療(自由診療)など、複数のケースを示しながらまとめますので、検討中の方はぜひ参考にしてください。
白内障手術にかかる費用は、大まかに以下の要素によって左右されます。
白内障手術は一般的に、保険診療として認められる単焦点眼内レンズによる超音波手術がよく行われています。ただし、より自然な見え方を期待できる多焦点眼内レンズを選択した場合や、レーザー機器を使う高度な手術を希望した場合は、保険が適用されず、費用が高額になる場合があります。
以下では、保険診療、選定療養、そして自由診療という三つの費用区分に分けて、それぞれ詳しく解説していきます。
まず、一般的な保険診療の範囲で行う白内障手術は、「単焦点眼内レンズ」を用いた手術です。単焦点レンズとは、主に遠距離または近距離のいずれか一方に焦点を合わせる性質をもつレンズで、視力補正の範囲は限られますが、費用面の負担が軽いのが特徴です。
ただし、上記金額は日帰り手術の想定であり、入院が必要となる場合は入院費用が加算されることがあります。また、医療機関によっては、多少の差が生じる場合もあるため、あくまで「目安」として理解しておきましょう。
近年、多焦点眼内レンズの選択肢が増えてきています。多焦点眼内レンズとは、遠方・中間・近方と複数の距離にピントが合いやすく、手術後のメガネ依存度を大きく下げることが期待できます。とはいえ、その分費用が高額となる傾向があります。
ここで登場するのが「選定療養」という制度です。多焦点眼内レンズを使った手術のうち、特定の基準を満たしたレンズや手術方法が「選定療養」として一部保険適用になるケースがあります。選定療養とは、保険診療に加えて、患者が希望する追加的な医療サービスなどに対して、自己負担が上乗せされる仕組みです。
つまり、選定療養に該当する多焦点眼内レンズの場合は、ベースとなる手術費用が保険適用になりながら、レンズ代など一部が自己負担になるイメージです。結果として、純粋な自由診療よりは費用負担が軽くなることがあります。
ただし、選定療養として認められる多焦点眼内レンズは限定的であり、医療機関によって扱いに違いがある可能性があるため、詳細は必ず手術を受ける病院で確認しましょう。費用目安は医療機関やレンズの種類によって差が大きいものの、一般的には片眼あたり20万~40万円程度になる場合が多いといわれています。
多焦点眼内レンズを選択する際に、保険が一切効かない「自由診療」となるケースがあります。たとえば、新しいタイプの多焦点レンズや、レーザーを用いた先進的な手術方法などが含まれる場合が代表的です。保険診療が全く適用されないため、手術にかかる費用は全額自己負担となります。
自由診療は医療機関が独自に料金を設定できるため、地域や施設によって大きく差があることが特徴です。多焦点レンズの種類も豊富にあり、より高性能なレンズを希望する場合はさらに費用が増える可能性があります。
このように、多焦点レンズによる白内障手術は高額になる可能性がありますが、手術後の見え方の利便性や生活の質を重視して選択する方が増えているのも事実です。どのレンズを選ぶべきか、保険がどこまで適用されるのか、事前にしっかり医師やスタッフと相談することが大切です。
白内障手術の費用を考える際には、年齢や所得による健康保険の自己負担割合も見逃せません。日本の公的健康保険は年齢と所得に応じて自己負担率が変化し、75歳以上の方で1割負担に該当する場合は比較的安価に手術が受けられることがあります。
単焦点レンズを使った保険診療の手術費用は前述の通り、1割負担なら片眼あたり15,000円前後、3割負担なら約45,000円前後を目安と考えられます。これらの金額差は大きく、また医療機関によっても微調整が加わるため、手術前にしっかりと費用の見積もりを確認することが大切です。
多焦点眼内レンズの場合は、たとえ75歳以上でも自由診療であれば保険が効かないため、全額自己負担となります。年齢によるメリットを享受できないケースもあることから、費用とメリット・デメリットを冷静に比較する必要があります。
白内障手術は、見え方を改善して生活の質を大きく向上させる一方で、費用面の悩みも生じがちです。ここでは、手術費用を抑えるためのいくつかのポイントを整理してみましょう。
日本には「高額療養費制度」という仕組みがあり、一定の自己負担限度額を超える医療費がかかった場合、その超過分が払い戻されます。もし、1か月の医療費が高額になりそうなときは、事前に「限度額適用認定証」を取得し、医療機関に提示しておくことで窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えることができます。
特に、両眼の手術を同じ月に受ける場合、トータルの医療費が大きくなるため、高額療養費制度の恩恵を受けやすい傾向があります。医師の判断にもよりますが、両眼の白内障がかなり進んでいる場合は、この制度を活用して費用面の負担を減らすことを検討してもよいでしょう。
公的医療保険(健康保険)だけでなく、個人で加入している民間の医療保険や生命保険などの給付金が受け取れる可能性もあります。入院給付金や手術給付金が設けられている保険に加入している場合は、白内障手術も給付の対象となるケースがあるので、保険会社に問い合わせてみましょう。給付金が下りれば、実質的な負担額が減る可能性があります。
両眼に白内障の症状があり、医師から手術を勧められている場合は、同じ月に両眼の手術を行う選択肢があります。これは、高額療養費制度の適用範囲内であれば、月単位での医療費がまとまるため、負担上限を超えた医療費分について後から支給を受けられる可能性が高くなるからです。
ただし、両眼同時手術には眼科医による判断が必要です。また、術後の通院スケジュールやリスク管理といった要素もあるので、必ず主治医と相談のうえで決めるのが良いでしょう。
もし費用面を最優先に考えるのであれば、保険が適用される単焦点眼内レンズの選択も有力な手段です。単焦点レンズは遠方か近方いずれかに焦点が合うタイプなので、場合によっては手術後にメガネが必要になることも多いのですが、費用が抑えられる利点があります。多焦点レンズにこだわりがない方であれば、まずは単焦点レンズのメリットを十分に検討してみるとよいでしょう。
医療機関や地域によって、白内障手術にかかる費用は異なります。自由診療の場合は特に、料金設定が大きく異なる傾向があります。複数の眼科や総合病院に問い合わせ、費用見積もりや手術内容、アフターケアの体制などを比較検討することが大切です。
手術のクオリティはもちろん重要ですが、担当医とのコミュニケーションがスムーズかどうか、費用を含めて納得できる説明を受けられるかなども重要な判断材料です。妥当な金額で、安心して受けられる病院を選びましょう。
費用を抑えるための具体策としては、以下のような追加の視点も考えられます。
白内障手術の費用は、保険診療・選定療養・自由診療といった枠組み、そして使用する眼内レンズの種類(単焦点か多焦点か)によって大きく変化します。一般的に保険診療で済む単焦点レンズの手術は比較的安価ですが、多焦点レンズを選ぶと費用が高くなることが多いです。
また、年齢や所得によって自己負担割合が1割~3割と異なる点も、最終的な支払金額に大きく影響します。高額療養費制度や民間保険の給付金など、使える制度をしっかりと把握し、可能な限り費用を抑える工夫をすることが重要です。さらに、両眼同月手術や医療機関の比較検討なども、トータルでかかる費用を抑えるうえで役立ちます。
白内障手術を成功させるカギは、手術前の情報収集と納得のいく意思決定にかかっています。保険診療の範囲内で十分満足できる場合もあれば、ライフスタイルの改善を目指して多焦点レンズを選択するのも一つの方法です。いずれにしても、担当医やスタッフとしっかり相談しながら、費用とメリットのバランスを考え、自分にとって最適な選択を行うことを心がけましょう。